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精神科看護師に向いている人の特徴は?【体験談や仕事内容も解説】
精神科看護師に向いている人はどんな人かと悩んでいませんか?
精神科は他の診療科と比べて特殊な領域なので、自分が精神科に向いているのか気になると思います。
そして精神科看護師の仕事はきついのか?怖くないか不安になる人もいると思います
本記事では、精神科に向いてるのか悩んでいる方に向けて、精神科看護師に向いている人の特徴について解説します。
なお、このブログでは精神科病院で10年勤務し、慢性期・急性期・認知症・男子閉鎖病棟など、様々な病棟を経験した筆者が、その知見を基にご説明します。
精神科看護師に向いている人の特徴は?
精神科に向いている看護師はどのような人でしょうか。実際に精神科にいた看護師さんを思い出しながら、精神科看護師に向いている人の特徴を紹介していきます。
自己管理ができる人
一つ目の特徴は「自己管理が出来る人」です。当たり前だろうという方もいると思いますが、ここでの自己管理とは複数の意味を持ちます。
まずは身体の自己管理。
基本的なことだが看護師の不規則勤務に対応できるように健康管理は大切です。
精神科には睡眠障害を持つ患者さんも多く、夜勤でも患者さんが記録室に来たり、部屋や病棟内をうろついていたりと、夜間でも患者さんと関わる機会はとても多いです。
そのため、精神科でも看護師は体力勝負という側面を持つます。
昼夜を問わず患者さんと接し、頭をフル回転させるためにも、まずは自身の体調管理をしっかりと行いましょう。
次に心理面、メンタル面の自己管理
これは、「気分転換」や「気持ちの切り替え」と言い換えられます。
精神科の患者さんは自分の感情や想いを素直にまっすぐ看護師に伝えてこられます。
相手の感情や想いの強さに圧倒されたり、自分の感情が揺さぶられたりすることもあります。
それは日常茶飯事ですし、対象理解を深める上でとても大切なことです。
しかし、いつまでの心が揺さぶられていると自分のメンタルが消耗してしまい、疲れてしまいます。
患者さんと深く関わりながら自分の感情もうまくコントロールし、自身のメンタルを安定させられると精神科で働きやすいと思います。
体と心の健康を自己管理出来る人は精神科看護師に向いていると言えます。
時間管理も重要
精神科の特性上、患者さんの話を聞く時間を多くもつことが求められます。
ほとんどの患者さんが自分の話や想いを聞いてほしいと思っています。
少しでも看護師と話をして悩みを解決したいと考えています。
しかし、病棟にいるすべての患者さん一人一人に時間をかけることはできません。
そのため、患者さんと話をする時間を決めて約束することが重要になります。
患者さんと決めた時間の中で最大限のパフォーマンスを出せる人は非常に優秀と言えます。
こだわりが強い方やとても几帳面な性格の方もいらっしゃるので、適切なコミュニケーションをとりつつも、約束した時間をしっかり管理することが求められています。
自分と違う価値観や考え方を受け入れられる人
精神科の患者さんは疾患の特性上、精神機能や認知機能が特徴的であることが多いです。
そのため理解力が乏しかったり、アウトプットが苦手だったり、認知パターンが独特な人もいます。
言葉の表現や態度、考え方が自分とはかなり違うと感じることも大いにあります。
また精神科では、白黒はっきりつけられない問題に直面することが多くあります。
例えば、身体拘束などの行動制限などは、治療として何が正しいのか正解が見つけにくい問題です。
看護師をはじめ医師や心理士の意見も聞きながら、行動制限の解除にむけて治療の方向性を決めていくことが望ましいとされています。
ここで看護師に求められるのは、患者や看護師、その他の職種の価値観や考え方をありのままに受け止めるということです。
自分と違う価値観や考え方を受け止めて、それらをまとめあげて、患者さんにとって何が一番良いのかをチームで話し合って進めていくことが大切です。
多様な患者さんのニーズに対応できるように、自分と違う価値観や考え方を柔軟に受け入れられると良いです。
精神療法や対人心理学などに興味がある人
「精神科=コミュニケーション」というのが学生時代からのイメージとしてあると思います。
確かに精神科ではコミュニケーションの中で精神療法の技法やSSTのような関わり方をすることがあります。
そのほかにも認知療法や行動療法、精神分析など様々なアプローチ方法があります。
普段のコミュニケーションではなく、こういった知識や技術を活かした治療的なコミュニ―ションができるととても重宝されます。
そしてそれは、一朝一夕で身に付くものではなく、日々の努力の積み重ねで会得していくものです。
単に人柄の良さやおしゃべりの力だけで乗り切るのではなく、対人関係論や心理学についてに興味関心をもって専門的な勉強が出来る人は、精神科看護師に向いています。
精神科看護師の仕事はきつい?仕事内容は?
精神科への転職を検討するときに「精神科の看護師の仕事はきつい?」という不安が出てくると思います。
精神科に興味はあるが、わざわざ仕事がきつくなるのは嫌だと考えるのは当然でしょう。
一般科と比べて精神科の看護師の仕事はきついのでしょうか?
結論、精神科の看護師の仕事が特にきついということはありません。
他の領域と比較して精神科だけがきついことがあるとは思いません。
むしろ身体的にも楽で、残業も少なくプライベートの時間を確保しやすいと思います。
詳細をしりたい方はこちらの記事も参考にしてください
→精神科看護師の体験談を紹介【あるあるや精神科を選んだ理由も解説】
精神科の看護師の仕事内容は?
先ほど精神科の仕事は身体的に楽だとお伝えしました。ここではさらに精神科看護師の仕事内容をもう少し詳しく説明します。
仕事内容がわかれば精神科の仕事がきついのか、イメージしやすくなると思いますので、転職を考える方はぜひ参考にしてください。
セルフケアの援助
精神科でももちろんセルフケアの援助を行います。
食事・排泄・入浴など基本的な日常生活援助は日々行っています。
精神科が他の診療科と異なるのが、患者さんの症状によって介助の量が大きく変化する点です。
精神科の特徴としてADLが精神症状に大きく左右されます。
日によって症状に差があります。1日の中でも調子の波があります。
症状が落ち着いていれば自分で自分のことができるが、症状が強く出ているときにはベッドから起きられず、部屋からも出られないということもよくあります。その時は看護師が日常生活の援助をします。
服薬の管理
精神科医療において薬物療法は大きなウエイトを占めます。
毎食後の薬や寝る前の薬に加えて、症状を抑えるための頓服薬、激しい精神症状を抑える筋肉注射など様々な薬を用いて症状をコントロールし、患者さんが安全安楽に生活できるように努めます。
精神科の看護師は、患者さんが正しく内服治療を受けられるように、服薬管理を行います。
医師から処方された薬を確実に服用してもらえるように促したり、患者さんからの薬に関する質問に答えたりします。
そして、患者さんの中には精神科の薬に不安を抱いている方もいます。
「本当に効き目があるのか」
「これで病気がよくなるのか」
「一度飲み始めたら一生やめられないのでは」という声をよく聞きます。
そんな不安に寄り添いながら、患者さんが納得できる形で服用してもらえるように、じっくりと話をしながらすすめていきます。
精神症状や精神機能の査定
一般科の看護師は患者さんにケアをする時に、解剖生理学や病態生理学に基づいてフィジカルアセスメントを行い患者さんの症状を把握します。
そして「必要な看護ケア」「実践した看護ケアの評価」を行います。いわゆるフィジカルアセスメントです。
しかし精神科領域では、人の精神(気持ち)は数値として表せず、考えは目に見えず、患者さんの言動のみを観察してアセスメントしなければいけません。
豊富な知識と理論を使い経験を組み合わせ、試行錯誤してアセスメントを行う事が多いです。
精神機能の評価・査定は精神科の看護師の専門性で大きな役割のひとつといえます。項目だけですが、アセスメントするうえで大切にしているものを挙げておきます。
・ 精神症状(外見、意識、記憶、認知、感情、意欲、思考、知覚、自我)
・心理的反応(欲求、悲観、危機、認知、障害受容、行動変容、発達段階、リカバリー、パーソナリティー)
・薬物療法(薬力、薬物動態)
・セルフケア(空気水食物、排泄、個人衛生、活動と休息、孤独と付き合い、安全を保つ)
・精神医学的病歴(主訴、現病歴、既往歴、生活歴、家族歴、住環境)
これらの項目を整理して、患者さんの状態について正しくアセスメントし、看護チームや医師、その他の職種に伝えていくことが精神科看護師の仕事で大切な役割です。
精神科は怖い?体験談を紹介します
精神科で看護師をしていると言うと「えー怖そう」とよく言われます。
twitterを見てみましょう
学生らにいまの時点での気持ちを聞くと「精神科は怖い」「どこまで踏み込んでいいかわからない」という声が出ました。
— ぎょうざ@精神科看護師×公認心理師 (@gyouzagorilla) July 19, 2022
精神科以外に勤務されている看護師のみなさま、精神科って怖いイメージありますか?怖さの原因って何でしょう?
もちろん精神科の看護師の方もご意見聞かせてください
「精神科に来ると自分が精神病になった気がして怖いね違うんだけどさ」
「看護師でも精神科怖いって言っててつらい」
といった声が上がっています。
やはり精神科は怖いと感じている看護師は多いように感じます。
そこで僕の体験談を交えながら、精神科がどんなところなのかお伝えし、精神科に興味のある方にイメージしてもらいたいと思います。
精神科で怖いと感じた場面は?
精神科で働いた中で実際に怖いと感じた場面をいくつか紹介します。自分ならどう対応するかと想像しながら見るとより理解が深まるでしょう。
興奮状態で大声を出しながらずっと部屋の扉を叩く患者
幻覚妄想から興奮状態にある患者が、突然大声を出しはじめ、扉を激しく叩いていました。
やはり大きな声や荒っぽい行動は怖いですし、他の看護師も怖いと感じました。
うかつに部屋の中に入ってしまうと、余計な刺激を与えてしまうため、対応も難しくとても困ったことを覚えています。
最終的にははじめは怖いなーと感じて部屋に近づきたくないとまで思ってましたが、次第に怖さも和らいできて、冷静に落ち着いて面接できるようになりました。
深夜の巡回で不眠の患者と出会う
深夜の巡回で不眠の患者さんにばったり会うと怖いです。
精神疾患をお持ちの方は、薬剤調整していてもその日の体調や環境、天気などで気分変調がおこり、睡眠障害に悩む方は少なくないです。
そんな患者さんが夜中目が覚めて、棟内を巡回して回っている時に、廊下の角でばったりと会ったときは、心臓が止まったと思うくらい怖いし驚きます。
夜間の巡回の怖い点をもうひとつ紹介します。
それが自室での「患者の様子をみること」です。
静かに寝ている場合は良いのですが、起きて何かを食べていたり、月明りで書き物をしていたり、他にもさまざまなことをしています。起きている人を見つけるたびにルールを逸脱する行為がないか、観察するのが怖く感じる時もあります。
精神科看護師は怖い人が多い?
精神科の看護師さんが怖いという声をtwitterで見かけたことがあります。精神科の看護師さんは本当に怖いのでしょうか。
僕の感覚としては、優しい人が多い、話をよく聞いてくれる人が多いという印象です。精神科と一般科に勤めたことがある看護助手さんに話を聞いたところ、
「精神科の看護師さんは一般科の看護師さんと比べ優しい。特に新入職の看護師さんや異動してきた看護師さんに優しい」
と教えてくれました。あくまでも個人の感想なので性格な情報ではないですが、そういう声もあります。
ただし、精神科の看護師も厳しい面を持っています。それは安全管理です。
危険物管理や劇薬の管理、暴力リスクが高い患者さんへの対応はシビアなので、何か問題が起こるとケガをしたり命に係わる事件に発展するため、ずさんな対応をしていると厳しい目で見られることがあります。
いずれにせよ決められたことを正しくやっていれば極端に怒られたり、怖い思いをすることはないでしょう。
精神科看護師に向いていない場合はどうすれば良い?
ここまで読んできて「あれ?わたしって精神科に向いてない?」と疑問に思ったかたもいるかもしれません。
精神科看護師として働きたいものの、自分が向いていないと感じる場合、どうすればよいのか。考えてみましょう。
まずは原因を分析しましょう
あなたが精神科に向いていないと感じる理由はなにか?頭の中を整理してみましょう。
環境?業務内容?それとも精神科そのもの ですか?
原因を分析することでとるべき手段が変わってきます。まずは自己分析をしてみましょう。
他の病院の精神科に転職する
環境や業務内容が原因なら他の病院へ転職することも視野に入れましょう。
精神科看護師はどこも人手不足です。
精神科に興味はあるけど、環境や業務内容に納得がいかない場合は、自分の希望に合った環境や業務内容の病院を探すのも良いでしょう。
自分自身の目標を整理するためにも、専門の転職エージェントに入れてみるのもご検討ください。
他の診療科へ転職する
反対に精神科そのものが向いてない場合は、他の診療科へ転職を検討しましょう。
精神科のスキルを持ったうえで他の領域にいくと広い視野と深い懐をもって患者さんと接することができます。
認知症や鬱傾向がある患者さんはたくさんいます。きっと問題なく業務に入ることが出来ると思います。
精神科に向いていないと感じたときは、別の道を探してみても良いかもしれません。
精神科の看護師は病みやすい?
周りの人に「精神科で働いている」というと「精神科とか自分の方が病みそう」とよく言われます。
ここでは「実際に精神科看護師は病むのか」について解説します。
結論:精神科看護師みんなが病むことはない
精神科で働くと必ず病むということはありません。
実際に僕は健康を保てていますし、10年間の臨床経験の中で精神科で働いたことが原因で病んでしまったという人は見たことはありません。
看護師が病んでしまう原因の多くは、人間関係やプライベートとの兼ね合いの問題だと思います。
精神科に限らず、病棟での人間関係やワークライフバランスを考えることは、人生においてとても大切な要素です。
症状や疾患への対応が難しくとまどうことはある
ほとんどの方にとって精神科の症状や疾患はあまり身近なものではありません。
また精神科未経験の方であれば「どのように幻覚妄想の訴えに対応すればよいか」「抑うつ状態の患者さんになんて声を掛けたらよいか」と悩む人は多いです。
経験を積む中で次第に解消されていくので心配はありませんが、精神科に来たばかりの人はしんどいときもあるかもしれません。
悩みはチームで共有して解決していく
しかし、患者さんの対応で悩んだり、アセスメントが上手くいかなくても、チームで話し合って協力して、治療を進めていくのが精神科看護です。
チームの看護師はもちろん、他職種とも連携を密にしてすすめていくので、自分ひとりで悩んで苦しむことはありません。安心してください。
しかし、もしいまの精神科の職場で、チームでの悩みの共有や解決が行われない場合は、転職を検討するのも一つの方法です。
精神科において多職種連携が行われないことはあまり望ましい環境とは言えません。別の病院への転職を検討しても良いかもしれません。
→精神科看護師へ転職するには?【仕事内容や適性についても解説します】
精神科看護師は使えない?これまでの経験は使える?
最近は聞かなくなりましたが、ひと昔前では「精神科の看護師は使えない」と言ったスタッフがいてました。
なぜ精神科看護師が使えないといわれるのか、実際はどうなのか、簡単に解説します。
またこれまでのスキルは活かせるのかについてもお話しします。
結論!一般科の経験やスキルは精神科で重宝されます!
精神科の看護師は身体のアセスメント力が弱いと言われます。
確かに精神科で経験できる身体疾患は少ないです。
専門的な治療や特殊な検査、高度な処置もほぼありません。経験できることが少ない点ではレベルが低いと言われるのも分かります。
しかし高齢化が加速している現代社会では、精神科と言えど様々な身体疾患を抱えた患者さんが入院してこられます。
精神科でも点滴や内科的な治療が必要な患者さんが年々増えています。そこで一般科の経験がある看護師が精神科に来た場合にも、とても貴重で重宝されます。
また自分では大したことないと思っているスキルでも、精神科では貴重なスキルで、活かせることはたくさんあります。
例)心電図、輸液ポンプ、シリンジポンプ、検査データの詳細な分析
これらを見て触れられるだけで精神科ではとても助かります。
自信をもって精神科で働いてください。
精神科で習得できる知識や経験は他の診療科でも活かせる
精神科で得られる経験や技術もたくさんあります。
例えば、認知症や鬱傾向の患者のアセスメントや対応力を身につけることができます。
超高齢化社会、ストレス社会と言われる現代社会において、精神科で得られるスキルは看護師にとって必須のスキルです。
他の診療科にも応用がききやすく、重宝されます。
実際に自分の後輩で精神科を2年半勤めた人が、いまは母子センターで働いており、マタニティブルーの褥婦さんのケアにおいて大変重宝されています。
その後輩曰く、「精神科で得られるものは教科書には載っていない」「実際に患者さんと接することで自然と身につく」と語っていました。
精神科の看護師は使えないどころが、むしろ他の領域でも活かせるスキルが身に付くおすすめの領域と言えます。
この記事を読んで精神科看護師への興味が強くなった方は、思い切って精神科看護の世界へ飛び込んでみてはいかがでしょうか。
精神科で働くことはあなたの看護師としてのキャリアに必ずプラスになります。ぜひ一度転職をご検討ください。
まとめ
精神科看護師の仕事内容や精神科への不安について紹介してきました。精神科看護師に向いている人の特徴が伝われば幸いです。
精神科看護師に特に向き不向きはありませんが、向いているのは、
・自己管理ができる人
・自分とは違う価値観や考え方を受け入れられる人
・精神療法や対人心理学に興味がある人
・精神科だから怖いとか自分が病むということはない。
・看護師や他職種と連携しながら関わるため、一人で悩むことはない。
この記事を読んで精神科で働けそうと思った方は、ぜひ一度精神科看護師への転職をご検討ください。