精神科看護師の体験談を紹介【あるあるや精神科を選んだ理由も解説】

精神科の仕事

精神科で働きたいと思うと、「看護師がどんな仕事をしているのか」が気になりますよね。

体験談を見ると、より鮮明に精神科看護師の仕事がイメージできます。

精神科は一般科と比べて特殊な領域なので、実際に働く前に「看護師がどんな仕事をしているのか」のイメージをつけてから働くことが望ましいです。

本記事では、精神科病院で看護師として10年以上勤務した筆者が、慢性期・急性期・認知症・男子閉鎖病棟などでの体験談を紹介します。

精神科に興味がある方は、この記事を読んでから転職を検討してみてください。

目次

精神科看護師の仕事内容とは?

仕事内容
精神科看護師の仕事内容は?

精神科看護師の主な仕事は、大きく分けて4つあります。

  • 日常生活の援助
  • 薬の管理
  • 精神症状や精神機能の査定
  • 他職種との連携

以上の4つです。

他の診療科と同じ部分もありますが、薬の管理と精神機能査定については精神科看護師ならではの仕事と言えるでしょう。

うつや統合失調症、認知症の患者さんに対して具体的にどのような仕事をしているのか、1つずつ解説していきます。

日常生活の援助

精神科でも、日常生活の援助は他の診療科と同様にあります。

しかし、精神科の患者さんのセルフケアレベルは様々です。

日常生活行動が自立している人もいれば、症状や障害によって何も自分で出来ない方もいます。

精神科の特徴として、「症状によってセルフケアレベルが変化する」という点が挙げられます。

具体的に筆者が体験した事例で説明します。

幻聴と妄想がある患者。ある日、午前中は精神症状が落ち着いていて、スタッフとも明るく会話をしたり、朝食を食べていました。

もちろんこの状態では、日常生活で看護師の介助は必要ありません

しかし、夕方になるにつれて幻覚妄想に左右された言動が見られ、表情もこわばり、ベッドで臥床して天井を一点凝視しはじめます。

看護師の声かけにも上の空です。このような状態になると、夕食のために座ることも困難で、自分で食事をとることもむずかしくなります。排泄もままならないこともあります。

これは少し極端な例ですが、このように朝と夜、午前午後で患者さんの状態が大きく変わり、介助量が変わることがあるのが精神科の特徴といえるでしょう。

薬の管理

薬物療法は、精神科の治療で大きなウエイトを占めます。

精神科の看護師は、医師と連携して薬物療法をすすめる役割を担っています。

精神科では、薬に対して不安を持つ患者が多いため、看護師が服薬の内容や必要性をきちんと説明できることが大切です。

また、患者さんが持つ不安を汲み取って医師に伝える必要があります。

「この薬は昨日までなかったけど、なんの薬?」

「最近薬が効きすぎてる気がする。先生に言って減らしてもらわれへんかな」

など、様々な訴えに対応します。

また精神科は、頓服の使用も多く、患者さんの希望に合わせて日勤帯・夜勤帯を問わず頓服対応するので、その判断も求められます。

食後薬の内容と服用時間と合わせて、1日の頓服の使用回数を加味し、その患者さんの1日の服薬管理を考えます。

以下に、日勤と夜勤の簡単なスケジュールをまとめました。

頓服の対応をする時間帯の幅広さが分かると思います。

日勤:8:30~17:00

8:30朝礼。朝食の片付け。朝食後薬の与薬・確認。
9:00朝のバイタルサイン測定。
患者面談、頓服の対応、入浴介助、買い物、OTの誘導、検査など
12:00昼食配膳。昼食後薬の与薬・確認
15:00喫茶など、レクリエーション活動
患者面談、頓服の対応、入浴介助、検査、医師からの指示受けなど
16:30記録と頓服の対応
17:00退勤
日勤のスケジュールの一例

夜勤:17:30~翌9:00

17:30始業 情報収集、施錠確認
18:00夕食配膳&介助、夕食後薬
19:00検温、おむつ交換、頓服対応
21:00眠前薬
22:00消灯
23:00頓服対応
交代で2時間半ずつ仮眠、その間も頓服対応
6:00
7:45朝食配膳&介助、朝食後薬
8:30日勤と交代、記録
9:00退勤
夜勤のスケジュール

精神症状や精神機能の査定

一般科の看護師が検査データを見るように、精神科も患者の精神状態・精神機能を査定し、アセスメントをします。

また精神科の看護師は、患者さんの様子を的確に言語化することが求められます。

例えば、看護記録に

O)幻聴あり。表情硬い

とだけ書いてあっても、その患者を実際に見ていない看護師には伝わりません。

まして、普段病棟にいない医師や作業療法士などには全く伝わりません。

O)配薬のために訪室。窓際に立って外を見ながら大声あり。看護師の呼びかけには返答無し。

S)なんやねん。お前らが悪いんやろうが。そんなん俺に言うなや。

O)話しかけと応答の形の幻聴あり。薬を持ってきましたと声をかけると振り返る。表情は険しいが服薬はスムーズにできる。

このように記録を書けば、その場面が伝わりやすいかと思います。

精神科の症状は目に見えないものも多く、他の看護師や他の職種の方と連携をとるためにも、看護師が患者さんの様子を正確に記録に残すことが必要です。

医師やその他職種との連携

精神科疾患は、その疾患の症状だけでなく、背景にあるものが複雑に関連していることが多いです。

育歴・発達段階・病歴・家族構成・経済状況・生活環境など様々な要因が関係しています。

そのため、複数の職種がその患者さんに関わり、それぞれの専門的な見解を基に、患者理解を深め、効果的な治療を進めていきます。

具体的には医師、臨床心理士、公認心理師、作業療法士、精神保健福祉士、管理栄養士などが挙げられます。

患者さんにより良い医療を提供するためには、細やかな情報共有が必要です。

定期的に開催される多職種のカンファレンスで、情報を共有することも非常に大切です。

複数の職種が同じ場を共有し、話し合うことで相互理解が深まり、結果として患者に一番効果的な治療を選択することができます。

しかし、多職種カンファレンスはせいぜい週に1回、多くても2回程度です。

1回に取り扱える患者数も2名程度です。

カンファレンスの場以外でも、普段からそれぞれの職種と連絡をとりあい、情報共有を密にしていきます。

医師が病棟にあがってきたときに、口頭で伝えたり、電話をかけて報告したり、電子カルテに記録を残しておくなど、内容とその緊急性に応じて、情報伝達の方法も吟味する必要があります。

精神科看護師のあるある?体験談を紹介

体験談
精神科看護師の体験談を紹介

ここで精神科看護師の体験談を紹介したいと思います。

実際に私が過去に担当した事例です。

体験談を通して、実際の患者さんの様子や精神科看護師の仕事がどんな仕事をしているか、イメージしやすくなります。

※個人情報保護の観点から、患者さんの情報は一部改変してます

体験談①:いつも外国から攻撃されるという不安に駆られる患者さん

統合失調症の方で被害妄想が強く、いつも「アメリカからミサイルが飛んでくる、俺がなんか悪いことしたのか」と不安でいっぱいの方でした。

その不安から、ナースコールが頻回にあり、そのたびに「安定剤ちょうだい」と頓服を希望されていました。

頓服は4時間空けて3回/日までという指示だったので、毎日どのタイミングで頓服を使うのか悩みました。

看護師と患者さんと話し合い頓服の飲み方について取り決めをして、薬の効果を主治医に伝えるという治療計画ですすんでいきました。

主治医の診察のときには妄想に関連した言動は見られず、「調子よいです。いつでも退院できます」と退院への意欲をしめすだけなので、看護師が妄想の状態や薬の効き方について細かく観察記録し医師へ報告するという流れがありました。

患者さん自身も「医者に言ってもあかんやん。看護師さんが言いやすいて」と笑って話していました。

看護師の力で治療方針が変わり、前にすすめた事例でした。

精神科あるある:患者さんは医師の診察ではおとなしいことが多い。看護師には素直に話しがち。

体験談②:こだわりが強く、お風呂が嫌いな患者さん

日常生活のこだわりが強く、入浴拒否がある患者さんでした。特にお風呂に関してはかなりこだわりがあり、決まった日にち・曜日にしか入らず、段取りにもかなり時間がかかっていました。

担当看護師が2年目の看護師で、プランとしては「強引に入浴を促す」「入浴したら追加のおやつを買いに行く」を挙げていました。しかし、患者さんを怒らせるばかりで、なかなかうまくいきませんでした。

そこで入浴しない理由について、看護師チームで話し合ってアセスメントをしたり、医師や心理士を交えてアプローチ方法を考えたりしました。

話し合った結果、無理に入浴をすすめるのではなくて、「患者さんの自己決定を促し、支えることが大切ではないか」という話がでました。

「入浴はこまめにしないといけない」という考えから、「本人の過ごしやすさが一番」という考えに移行したところ、症状も落ち着き、良い経過をすすめるようになりました。

一見すると、世間一般の感覚とずれることが、精神科看護では大切なこともあります

精神科あるある:世間一般と少し違う視点で物事を判断することがある。

精神科看護師はなぜレベルが低いと言われる?

精神科看護師はレベルが低い
本当に精神科看護師はレベルが低い?

精神科の看護師になろうとしたとき、頭をよぎるのが「精神科看護師はレベルが低い」と言われる考えです。

なぜ精神科看護師はレベルが低いと言われるのでしょうか。大きくこの2点が言われています。

  •  身体のアセスメントが弱い
  •  何のスキルも身につかない

 確かに経験できる身体疾患は少ないですし、検査や処置も少ないです。

どうしてもフィジカルアセスメントが苦手な人が多いイメージはあります。

しかし、高齢化社会で様々な身体疾患を抱えた患者さんが入院する時代になってきました。

入院理由は認知症だとしても、身体疾患の既往がある患者さんもいて、おのずと身体疾患も見る機会が増えています。

ですので、精神科であっても必要以上に、レベルが低いと思わなくて大丈夫です。

精神科看護師が苦手な分野はもちろんあります。

しかし、精神科だからこそ身につけられるスキルや技術があります

超高齢化社会、ストレス社会の時代に、応用の利きやすいスキルが身につくことを強く主張します。

詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください

→精神科看護師はレベルが低い?【使えないと言われる理由や対策を解説】

精神科看護師を選んだ理由は?

Motivation
精神科看護師になった理由とは

私が精神科看護師を選んだ理由は大きく3つあります。

高校生の時に、進路を決めるころにはすでに精神科看護師の道を志していました。

精神科への想いはかなり強いです。

ここでは精神科看護の道を選んだ理由を紹介したいと思います。

これから精神科を目指す方の参考になれば幸いです。

高校生のときから人のこころやコミュニケーションに興味があった

高校生くらいから、友達との間で心理テストが流行っていたことがきっかけで、コンビニで売っている500円の心理学の本を買って勉強していました。

心理学という物を学びながら、「医療現場で安定した仕事につきたい」という想いから、人の心をみる精神科の看護師というものを志すようになります。

また看護師として、「コミュニケーションスキルを身につけるには精神科がベスト」と思い、進路を精神科看護師に決定しました。

将来ロボット医療が発達したとしても、人間しかできない領域だと確信していた

今現在、ロボット医療の技術が進んでいます。

離島にいる患者に対しての遠隔での外科手術や、バーチャル映像による手術のシミュレーションなど、技術の進歩は目まぐるしいです。

ベッドや介助ロボットも進んでおり、またAIBOやペッパー君などコミュニケーションがとれるロボットも増えてきています。

自分が小学生の頃から考えても、技術の進化はすすみ、10年後20年後の未来がどんな社会になっているか想像がつきません。

これから定年まで働くとして、「進化したロボットにとられない仕事はなにか」とずっと考えていました。

そこで、どんなにロボットが進化をしても、患者さんの不安に寄り添ったり、表情やこまかな仕草などを観察したりするのはロボットには難しいと考えました。

ただルール通りに患者と接するのではなく、患者との関係性を大切に治療をすすめていく、そんな領域なら人間がロボットに取って代わられることはないと確信しました。

つまり、精神科の看護師は人間にしかできないため、ロボットに仕事を取られる心配がなく将来性があると判断したわけです。

自分の身体ひとつで仕事ができるようスキルを磨きたかった。

さらに感覚的な話なのですが、「何の道具や機械がなくても、自分の身一つで看護ができるようになりたい」というのも精神科看護師を志す動機でした。

大規模な設備や特別な機械がなくても、自分の力で困っているひとの力になりたい。

人を癒せるようになりたいと思い、精神科の看護師を目指しました。

実際に精神科で10年働いて、まだまだ力不足ですが、患者さんがうまく表現できない思いを引き出したり、相手の感情を汲み取ってその人にあった関わりをするというコミュニケーションスキルはある程度身につきました。

自分が高校生の頃に目指していた、精神科の看護師さんに少しずつ近づいていると感じています。

以上が筆者の経験談でした。

精神科に興味がある方はどれかに共感できることがあったのではないでしょうか。

精神科10年勤務の私がおすすめする精神科看護師に向いている人の特徴

向いている人
精神科の看護師に向いているか

さてここまで実際の経験を基に精神科看護師について説明してきました。

それらを踏まえて、精神科10年勤務の私がおすすめする精神科看護師に向いている人の特徴を3つ紹介します。

下記に当てはまる方は、精神科看護師をぜひ積極的に検討してください。

自己管理が出来る人

ここでの自己管理とは複数の意味を持ちます。

まずは自身の健康管理です。

精神科でも、「看護師は体力勝負」という側面を持ちます。

昼夜を問わず患者さんと接し、頭をフル回転させるためにも、まずは自身の体調管理をしっかりと行いましょう。

特に精神科のコミュニケーションは、かなり頭を使い、言葉選びや姿勢など集中力を要します。

ベストパフォーマンスが出せるように自身の健康管理は大切です。

次に、メンタル面の自己管理です。気分転換や気持ちの切り替えと言われます。

精神科では、相手の感情や想いの強さに圧倒されたり、揺さぶられたりすることもよくあります。

患者さんの思いをくみ取り、感情を受け止めることは、対象理解を深める上でとても大切なことです。

しかし、いつまでも心を揺さぶられていると自分のメンタルが消耗してしまい、疲弊してしまいます。

患者さんと深く関わりながら、自分の感情もうまくコントロールし、自身のメンタルを安定させられると精神科で働きやすくなると思います。

心と身体の自己管理が出来る人は、精神科看護師に向いていると言えるでしょう。

自分と違う価値観や考え方を受け入れられる人

精神科の患者さんは疾患の特性上、特徴的な精神機能や認知機能を持っていることが多いです。

自分の意思を伝えることが苦手であったり、物事をとらえる認知のパターンが特徴的な人もいます。

言葉の表現や態度、考え方が自分とはかなり違うと感じることも大いにあります。

また精神科では、白黒はっきりつけられない問題に直面することが多くあります。

例えば、精神科で良く行われる行動制限は、何が正しいのか正解が見つけにくい問題です。

治療的な側面と倫理的な側面とで非常に判断が難しいです。

そこで看護師だけでなく、医師や心理士の意見も聞きながら、行動制限の最小化・解除にむけて、話し合いを重ねていくことが望ましいとされています。

ここで看護師に求められるのは、「患者や看護師、その他の職種の価値観や考え方をありのままに受け止めること」です。

時には、自分と違う価値観や考え方に出会うこともあるでしょう。

それを突き返したり、否定してしまっては視野が狭くなり、本当に患者さんにとって最適な治療を提供できなくなります。

自分と違う価値観を受け止めて、患者さんにとって何が一番良いのか柔軟に考えられる人は、良い精神科看護師になること間違いなしです。

精神療法や対人心理学などに興味がある人

「精神科=コミュニケーション」というのが、学生時代からのイメージとしてあると思います。

確かに精神科では、コミュニケーションの中で認知行動療法の技法や、トークンエコノミーといった、心理学的アプローチを用いることがあります

単に人柄の良さや、フリートーク力で患者さんと接するのではなく、対人関係論や心理学についてに興味関心をもって、専門的な勉強し実践出来る人は、精神科看護師に向いています。

もし、どれか一つでも当てはまるという方は、ぜひ精神科看護師への転職をご検討ください。こちらの記事も合わせてご覧いただければ参考になると思います。

→内部リンク:「転職エージェント」

まとめ

精神科の看護師の体験談を交えながら、精神科看護師の仕事内容をご紹介しました。

まとめると…

  • 精神科看護師は精神機能や精神症状について査定し、他職種と連携することが特徴
  • 精神科でも得られるスキルはたくさんある。看護師として今後も役に立ちます
  • 精神科は将来性があり、伸びしろがある領域

もし精神科看護師という仕事に興味が深まり、転職を検討しているのであれば、こちらの記事も合わせて読んでみてください

→精神科看護師へ転職するには?【仕事内容や適性についても解説します】

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この記事を書いた人

【経歴】
大阪大学医学部保健学科看護学専攻卒業後、大阪の精神科病院で10年勤務。慢性期・急性期・認知症・男子閉鎖病棟など、あらゆるステージの精神科の患者に看護を提供してきた。認知行動療法のグループの立ち上げも行う。看護研究も2例行い、いずれも日本精神看護学会の全国大会で発表している。現在は看護教員として未来の看護師の育成に励む。

【保有資格】
看護師、公認心理師

【コンセプト】
①精神科に興味がある看護師に精神科で働く魅力を伝える
②新卒で精神科で働きたい看護学生が安心して働けるように情報提供する

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