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精神科看護師の向き不向きとは?【辛さやストレスについても解説】
精神科看護の適正について不安に感じていませんか。
精神科は他の診療科と比べて特殊な領域なので、どのように精神科に対して向き不向きが決まるのか気になると思います。
本記事では、精神科に向いている人の特徴や不向きな人の特徴を解説します。
また「精神科の看護師はきついのか」「精神科の看護師はレベルが低いのか」という疑問も解消します。
なお、このブログでは大阪の精神科病院で10年勤務し、慢性期急性期認知症男子閉鎖病棟などを経験してきた筆者が、その知見を基に精神科看護についての疑問を解決します。
精神科看護師に向き不向きはある?
看護師のみなさんは、自分が精神科に向いているのか、それとも不向きなのか気になるのではないでしょうか。
精神科に興味があるものの、「自分は精神科に向いていないかもしれない」と、不安を抱くのは当然です。
ここで、精神科看護師に向き不向きがあるのかを、精神科看護師歴10年以上の私が断言します。
結論、特別なことは必要ありません。
精神科看護師に、向き不向きは存在しません。
加えて、精神科看護師になるのに、特別なものは何もいりません。
看護師免許以外に資格はいりませんし、センスや才能も必要ありません。
あなたが望めば、すぐに精神科の看護師になれます。
精神科で働く上で必要な知識や技術はたくさんあります。
しかし、それらは実際に働きながら身につけていけば良いです。
事前に、教科書や参考書で学習することはもちろん大切ですが、実際に患者さんと関わりながら、実践の中で得られる知識や経験に勝るものはありません。
特に精神科という領域は、その傾向が強いと思います。
たとえば「うつの人にがんばれと言ってはいけない」ということは、一般の方でも知ってる人は多いと思います。
しかし、実際にうつの患者さんを前にするとつい「頑張っていきましょう」と言ってしまいそうになります。
そこで、ゆっくりと患者さんの話を聞きながら、「どのような言葉をかければ良いのだろう」と試行錯誤することが、精神科の看護師として成長していくことに繋がります。
そして、ひとつ大切なことがあります。
それは、「精神科で働く理由を明確にしておく」ということです。
精神科は、他の診療科と比較して少し特殊です。取り扱う疾患や治療も毛色が違いますし、なんとなく働くということではモチベーションが続きません。
「勉強になりそうだから」
「残業が少ないから」
「スキルを身につけたいから」
など、自分なりの理由をしっかり持って精神科に来れば、自分も患者さんも満足の行く看護師として働けるようになるでしょう。
向いている人の特徴は?
とはいえ、精神科での看護師に向いている人はいます。大きく2つの特徴があります。
自己管理ができる人
1つ目は「自己管理ができる人」です。
この自己管理とは、複数の意味を持ちます。
まずは体の管理、健康管理と言い換えることができます。
社会人として当然のことと言われればそれまでですが、精神科も他の診療科と同様に、体力勝負という面があります。
様々な患者さんに対して頭をフル回転させて関わっていくためには、自分の健康管理を徹底できることが必要不可欠です。
また、メンタル面の管理も大切です。
気分転換や、気持ちの切り替えと言い換えられます。
精神科の患者さんは、感情や想いを素直にまっすぐ看護師に伝えてこられます。
相手の感情や想いの強さに圧倒されたり、揺さぶられたりすることもあります。
それは日常茶飯事ですし、相手の言葉に心を動かされることは、対象理解を深める上でとても大切なことです。
しかし、いつまでの心が揺さぶられていると自分のメンタルが消耗してしまい、疲れてしまいます。
患者さんと深く関わりながら、自分の感情もうまくコントロールし、自身のメンタルを安定させられると精神科で働きやすいと思います。
体と心の健康を自己管理出来る人は、精神科看護師に向いていると言えます。
物事を柔軟に考えられる人
2つ目の精神科看護師に向いている人の特徴は、「物事を深く柔軟に考えられる人」です。
精神科では、白黒はっきりつけられない問題に直面することが多くあります。
たとえば、ひどく妄想がひどく病院の食事をまったく食べられず、部屋からも出られない患者さんがいるとします。
その患者さんが、コンビニのクリームパンだけはいつでも食べられることがわかりました。
健康な人であれば、毎食クリームパンばかり食べていたら注意されます。
しかし、何も口にできない患者さんならばどうでしょうか。
「何も食べないより良い」
「もしかしたらパンを買いにいくために売店まで行けるかもしれない」
と柔軟な考え方で対応したほうが、患者さんの今後の展望が開けると思いませんか。
上の例は実際にあったケースです。別のケースもご紹介します。
精神科看護師は、患者さんの発言や行動の意味を深く考えることが求められます。
たとえば、看護師に拒否的な態度をとる患者さんがいるとします。
拒否されたからと言って、そこで関わることを辞めてしまっては患者さんとの関係は終わってしまい、治療はとまってしまいます。
「この人はなぜそんな態度をとったのか」
「何か伝えたいことがあったのではないか」
「どんな気持ちなのだろうか」
と、相手を理解しようと深く考えることが精神科看護では大切です。
向いていない人は?
では、精神科看護師に向いていない人はどんな特徴があるのでしょうか。
はじめに述べた通り、精神科の看護師になるために特別な才能やスキルは必要ありません。
それでも精神科に向いていない人はいます。ここでは2つの特徴について解説します。
自己管理ができない人
まずは、自己管理ができない人です。
前述の心身の健康管理はもちろんですが、時間管理ができない人も精神科看護師に向いていません。
看護師以前に、社会人としてふさわしくないですよね。
精神科で看護師として働くなら、まずは自己管理できるようになりましょう。
自分の価値観や考え方に固執する人
2つ目は、自分の価値観や考え方に固執する人です。
精神科には様々な価値観や考え方、背景を持った方が入院されます。
自分と価値観が大きく異なったり、精神疾患の特性上、独特な思考回路を持つ方も多いです。
そんな患者さんを相手に仕事をするのに、自分の価値観や考え方を押しつけ、相手を理解しようとしないのは望ましくありません。
多様性の時代で看護師をするなら、相手の価値観や考え方に興味を持って、柔軟に関わりたいですね。
精神科看護師の仕事内容は?
では具体的な精神科看護師の仕事内容とはどんなものでしょうか。
実際の体験を踏まえながら、精神科看護師の仕事内容について解説していきます。
仕事内容が知ることで、自分の向き不向きがイメージしてもらいたいと思います。
主なものを4つ紹介します。
セルフケアの援助
精神科でも、もちろんセルフケアの援助を行います。
食事・排泄・入浴など、基本的な日常生活援助は日々行っています。
精神科と他の診療科と異なるのが、患者さんの症状によって介助の量が大きく変化する点です。
精神科の特徴として、ADLが精神症状に大きく左右されます。
日によって症状に差がありますし、1日の中でも調子の波があります。
朝は調子が悪くても午後から元気だったり、昼間は調子よかったのに夕方になると不安定になったりします。
症状が落ち着いていれば自分で自分のことができるものの、症状が強く出ているときにはベッドから起きられず、部屋からも出られないこともよくあります。
その時は、看護師が日常生活の援助をします。
精神科では、症状を見ながら必要な援助を判断し、日常生活援助を行います。
薬の管理
精神科医療において、薬物療法は大きなウエイトを占めます。
精神科の看護師は、患者さんが正しく内服治療を受けられるように服薬管理を行います。
毎食後の薬や寝る前の薬に加えて、症状を抑えるための頓服薬、激しい精神症状を抑える筋肉注射など、様々な薬を用いて症状をコントロールし、患者さんが安全・安楽に生活できるように努めます。
医師から処方された薬を確実に服用してもらえるように促したり、患者さんからの薬に関する質問に答えたりします。
患者さんの中には、精神科の薬に不安を抱いている方もいます。
「本当に効き目があるのか」
「これで病気がよくなるのか」
「一度飲み始めたら一生やめられないのでは」
という声をよく聞きます。
そんな不安に寄り添いながら、患者さんが納得できる形で服用してもらえるように、じっくりと話をしながら進めていきます。
精神症状や精神機能の査定
一般科の看護師は、患者さんにケアをするときに、解剖生理学や病態生理学に基づいてアセスメントを行い、患者さんの症状を把握します。
そして「必要な看護ケア」「実践した看護ケアの評価」を行います。いわゆるフィジカルアセスメントです。
しかし、精神科領域では、人の精神(気持ち)は数値として表せず、考えていることは目に見えません。
患者さんの言動のみを観察して、アセスメントしなければならなく、難解な知識と理論を使い経験を組み合わせて試行錯誤し、ケアすることが多いです。
精神機能の評価査定が、精神科の看護師の専門性で大きな役割の1つと言えます。
項目だけですが、アセスメントするうえで重要なものを上げておきます。
- 精神症状(外見、意識、記憶、認知、感情、意欲、思考、知覚、自我)
- 心理的反応(欲求、悲観、危機、認知、障害受容、行動変容、発達段階、リカバリー、パーソナリティー)
- 薬物療法(薬力、薬物動態)
- セルフケア(空気水食物、排泄、個人衛生、活動と休息、孤独と付き合い、安全を保つ)
- 精神医学的病歴(主訴、現病歴、既往歴、生活歴、家族歴、住環境)
これらの項目を整理して、患者さんの精神機能の査定をすることが精神科看護師の仕事で大切な役割です。
医師やその他職種との連携
いまの医療では、他職種との連携が必須と言われています。
精神科も例外ではありません。連携の調整役だけでなく、むしろ他職種との連携の中心に看護師がいます。
簡単に、他職種との連携の内容について説明します。
- 医師:治療方針の検討や薬剤調整、患者さんの症状報告
- 臨床心理士、公認心理師:精神機能の査定や効果的なコミュニケーション方法の検討
- 作業療法士:現実的な作業活動を行うことで作業能力の向上や対人関係能力を上げる
- 精神保健福祉士:患者さんが利用するサービスや住居や金銭の管理を行う
- 管理栄養士:栄養指導はもちろん、食事を中心に生活の指導も担う
お互いに、自分たちが持っている情報を交換し、協力して治療を進めることが大切です。
精神科の患者さんは、スタッフのことをよく見ています。
「自分にとって味方は誰なのか」「誰になら心を開いて良いのか」を自分でよく考えて見極めています。
そのため、「特定の職種しか知らない情報」がよく出てきます。
看護師は病棟で本人から直接話を聞きつつ、他職種の方からも情報収集をしていく必要があります。
そのような連携をして患者の情報を集め、対象理解を深め、また医師へ報告して治療の方向性を調整していきます。
その中心にいるのが精神科の看護師です。
精神科看護師がきついのは本当?ストレスが多い?
精神科で看護師として働いていると、周りから「きつくない?ストレスすごそう」と言われることがあります。
しかし個人的には、精神科が他の領域と比べて、特別しんどい領域だと思ったことはありません。
むしろ、生死に関わるような身体管理もありませんし、ルーティン業務の量は少ない方だと思います。
身体的には楽と言えるでしょう。
一方で、精神的にストレスを感じることもあります。
患者さんとの会話で言葉を慎重に選んだり、患者間のトラブルが起こらないように病棟全体の観察も必要なので、気を張ることはあります。
ちなみに時間的にきついと感じたことはありません。
残業は基本的に少ないです。急な入院も基本的にはありません。
急性期やスーパー救急の病棟のみ急な入院があります。
しかし大抵の病院で、同じスタッフばかりが残ることがないように勤務調整してくれます。
一般科の病院から来た看護師さんが、一番驚くのが退勤時間の早さだと思います。
残業が苦手で自分の時間を確保したい方に、精神科看護師はとてもおススメです。
精神科看護師はなぜレベルが低いと言われる?
精神科に転職を考えるときに、「精神科看護師はレベルが低い」と言われるのかと不安ではないでしょうか。
ここではなぜ、精神科看護師はレベルが低いと言われるのかを解説します。
身体のアセスメントが弱い
精神科の看護師は、身体のアセスメント力が弱いと言われます。
確かに、精神科で経験できる身体疾患は少ないです。
専門的な治療や特殊な検査、高度な処置もほぼありません。その点では、レベルが低いと言われるのも分かります。
しかし、高齢化が加速している現代社会では、精神科と言えど様々な身体疾患を抱えた患者さんが入院してこられます。
僕自身、この10年の間で精神科に入院される患者さんの高齢化が進んでいると実感します。
慢性的な身体疾患をお持ちの方も増えてきたと思います。
おのずと、精神科でも身体疾患を見る機会が増え、ある程度の身体管理ができるようになりました。
つまり、身体のアセスメントが弱いという理由に関しては、高齢化社会の現代において、徐々に解消されている問題だと捉えています。
何のスキルも身につかない
確かに、ドレーン管理や急性期の脳血管障害の治療を観察するような高度なスキルは身につきません。
その代わりに精神科では、認知症や鬱傾向の患者のアセスメントや対応力を身につけることができます。
超高齢化社会、ストレス社会と言われる現代社会において、精神科で得られるスキルは看護師にとって必須のスキルです。
他の診療科にも応用がききやすく、精神科であれば無理なく学ぶことができます。
つまり、一度精神科に勤めた後に、スキルアップをした状態で他の診療科に転科することもできるということです。
みなさん安心して精神科で働いてください。必ずあなたのキャリアにおいて大きな財産となります。
新卒の看護師でもスキルは身につく?
看護学生さんの中には、すでに精神科に興味があり、「新卒で精神科に就職し、看護師として働きたい」と考えている人もいます。
年々希望者は増えてきており、体感的には、クラスの2名くらいは新卒で精神科に就職しています。
新卒で何のスキルもない状態で、「いきなり精神科で大丈夫なのか?」という不安もあると思います。
しかし、精神科10年勤務の僕が断言します!
新卒で精神科でもまったく問題ありません。安心して精神科看護の世界にお越しください。
新人教育で、基本的な身体管理のことなどは研修を受けますし、院内留学制度がある病院もあります。
自分の努力次第で、いくらでも勉強することは可能です。
「本当は精神科に行きたいけど、スキルを身につけるために一般科にいこう」
この考えも悪くありません。計画的で良いとおもいます。
しかし、せっかく精神科で働きたいという高いモチベーションがあるのであれば、その勢いのまま精神科で働き、そこで必要な知識や技術を身につければ良いと僕は思います。
もし得られるスキルに不安がある場合は院内の研修や院外の研修に出ればよい
とはいえ、習得できるスキルに不安がいる方もいると思います。
そういう方は院内の研修や外部研修に参加してみてはいかがでしょうか。
いまは、院内研修制度や外部研修への支援体制が整っている病院も多いです。
それらの教育制度をフル活用して、自分に必要なスキルを身につけましょう。
ただし、すべての病院が教育体制を整えているとは限りません。
転職するなら、事前に教育体制を確認しておく必要があります。
ホームページ上で教育体制が整っていると謳っていても、自分が望むものでないこともあります。
そんなときには転職エージェントを活用してみるのもオススメです。
転職エージェントの担当者は、医療業界を担当しているケースも多いので、病院やクリニックの内情を深く知っています。
そのため、「支援体制が整っている病院が良い」と転職エージェントの担当者に伝えることで、希望通りの病院を紹介してもらえる可能性も高いです。
教育体制が整っている病院を探したい場合は、転職エージェントの無料相談だけでも活用してみてはいかがでしょうか。
精神科看護師は病む?その理由は?
精神科看護師が、周りからよく言われることの第1位が「精神科って自分のほうが病みそう」だと思います。
しかし、精神科で働くと必ず病むということはありません。
では、なぜ精神科看護師は病むと言われるのでしょうか?大きく3つに分けて解説していきます。
よくわからない領域だから不安
人間は、自分が分からないもの、理解できないものに対して強い不安を抱くものです。
働いたことがない精神科に対して、不安を抱くことは当然です。
実際に働いていくにつれて理解が深まり、不安も軽減されていきます。
分からないときは先輩や同僚に相談しながら、自分のペースで進めていけばよいです。
精神科の看護師は優しい人が多いので、周りの人に助けてもらいながら少しずつ精神科の事を分かっていきましょう。
また精神科の実際について知りたい場合は、こちらの記事も合わせて読んでみてください。
→精神科看護師の体験談を紹介【あるあるや精神科を選んだ理由も解説】
暴力や暴言が怖い
精神科といえば、患者さんからの暴言や暴力があるというイメージがあるかもしれません。
事実として、リスクは高いです。
取り扱う疾患や障害の特徴・閉鎖的な治療環境・本人の同意を必要としない入院形態など、様々な要因で暴力のリスクが高くなっていることは否めません。
しかし、昔に比べて今の精神科医療は安全性が確保されています。
CVPPPをはじめ、正しい予防方法や対応方法は確立されています。
それらの知識と技術を身につければ、過剰に怯える必要はありません。
自分も同じように病気になるのではないか。
精神科の疾患や症状、患者さんが語るエピソードの中には、自分たちの想像をはるかに超えるものもあります。
壮絶なエピソードを聞いたり、激しい症状の対応に疲れたりすることはあります。
しかし、それらの症状や疾患がそのまま自分に移ることはありません。ご安心ください。
看護師が病んでしまう原因の多くは、人間関係やプライベートとの兼ね合いの問題です。
病棟での人間関係やワークライフバランスに悩むことは、なにも精神科に限った話ではありません。
むしろストレスの対処行動や自分のメンタルケアもうまくなるので、精神的に安定する傾向があります。どうぞ安心して精神科で働いてください。
まとめ
今回は精神科の看護師の向き不向きについて解説しました。
この記事で精神科看護師の具体的なイメージがついて、自分が精神科で働けるのか考えられるようになれば幸いです。
簡単に今回の内容をまとめます。
・精神科看護師になるうえで、向き不向きは特にありません。
・「精神科だけが特別きつい」ということもありません。
・ストレスが多そう、病みそうというイメージもあるが大丈夫。
・精神科だからこそ得られるスキルはたくさんある。
もし今回の記事を読んで、精神科への転職をご検討される方はこちらの記事も合わせてご参考ください。
転職エージェントを活用することでよりご自身にあった情報を集めることができます。ぜひご一読ください。